官能植物


官能植物
木谷美咲
丸山 光・撮影
千葉ひなじ・挿画
NHK出版

 


表紙はクロス装に銀の箔押


冥がりから浮かびあがる植物たち…


黒のインクだけでは色に濃度や艶が出ないため、
4色を組み合わせて黒い地色になっています。


しかし、4色を組み合わせると当然ながら版ズレが…
にもかかわらず極小の装飾パターンと本文を明朝体で白抜きをしています。
印刷所の細心の注意がなければ成立しません。
今回も長年信頼しているプリンティング・ディレクターさんに難題をお願いしました。

また、手にとってくださった方にテーマの重みを実感していただくため、
近年珍しいほどの「重い本」となっています。
紙の選択が影響してしていることはもちろんですが、
通常の本の3倍以上ではないかと思われるインクの使用量が
「重さ」に寄与しているのではないでしょうか。


全体を「黒い本」とするため、帯の裏も特殊な黒インクで刷ってあります。


本全体に植物的な有機性を持たせるため、写真の周囲に文字を回り込ませたり、
文字の大きさを変えたり、といった作業を各ページに施しています。
ただし、文字がパラパラしてしまっては読みにくいばかりなので、
1行ずつ手作業で文字の位置を調整しています。


丸山さんの写真がなければこのテーマの本は実現できなかったと思われるほどです。


ひなじさんのイラストを見た瞬間に、印刷の線数が上がりました(笑)

レガシーな印刷技術のすべて注ぎ込んだ、
これほど工芸的な本に関われたことを嬉しく思います。

企画から出版までとても難産だったこの本、
著者・木谷美咲さんの思いに応えられていたらよいのですが…